あれから丸3年が経ったらしい。
一瞬で日本は変わってしまったと思ったし、これからさらに変わっていくだろうとも思った。
僕たちは這いつくばるようにして倒れ込んだから、次は立ち上がり方が重要だとも思った。
3年ってのは、例えばBOYがMANに変わるには十分な期間だし、
幸運にも留年しなければハイスクールも卒業できるし、
酒の飲み方を覚えるにもうってつけで、
ジャンキーがドラッグから立ち直るにも悪くない期間だ。
この3年、僕たちに起こったこと。
- 放射能が東京を覆った(今も毎日、クソ真面目に覆い続けている)
- デモの風景が日常的になった
- 関東産の生の魚を食うことに躊躇するようになった(酔ったときには、それも忘れて、自分を騙しながら食べることもある)
- 選挙では相変わらず既得権益が票を集めている(僕たちの票は一体どこに消えてしまったんだ?)
- 原発は今も動いている
- 相変わらず東京に人は多く、通勤電車は満員御礼の連続記録を更新し続けている
- 何人かの友達は海外や日本のローカルに移ってサステイナブルな生活を選び、残りのほとんどは今も東京にいる
3.11以降の社会は、ある部分では僕たちの予想どおりに変わってきているし、
その他の部分では予想を外れ、何もなかったかのように平穏を装っている。
こうやって客観的に書き出してみるほど、放射能とストレスが溢れ、
原発も止まらないこの国のこの街にしがみつく理由なんてないような気がしてくる。
マトモな神経じゃちょっと考えられないような環境だ。
そもそもなんで東京にいるんだったっけ? ここには何があるんだった?
僕たちが今ここにいる意味を探すために、編集部員の話を聞いた。
「今東京にいる理由って?」
東京を出られる人、出られない人。
閉じ込められた。東京に。
半分意図的にだが。
理由は多分おもしろいから。
ここは何かと刺激的。
出る理由はまだない。
東京は今の自分にとって都合の良い場所。
それ以上でもそれ未満でもない。
ここで何か残したい。
でもまだ残せてない。
俺はまだ本気出してない。
そう、本気出してないだけ。
3.11。
当たり前の光景は
ある日突然、理由なく奪い去られる。
覚悟はあるのか?
忘れるな。
はよ本気出せよ。
霜嵜和敏(編集)
けどここにいる。
なんとなくまだここにいた方が良い。
世の中はついに変わりそうな気もするし、変わらない気もする。
上田倫史(プロデューサー)
3.11
あの日のことを思い出してみる。
思い出している自分を見つめて、
ふだん忘れてるってことに気づく。
そのことに気づいて、せつなくなる。
でも、忘れてるから生きていられるんだ、とも思う。
それでも、ずっと忘れないでいたいと思うし、
これからも、思い出しつづけると思う。
無責任で、都合がいいけど。
震災の被害にあったすべての人が、一刻も早く、
忘れていられる時間が、長くなりますように。
本田守武(編集)
ただ、離れる理由の方がまだ強くなってないから今も東京にいる。
もし、自分に家族があり、子供がもしいたら
すぐに家族を連れて田舎へ帰ってたんだろうな、とも思う。
北岡稔章(フォトグラファー)
地震から3年。
仕事も変わったし、付き合ってた彼女とも別れた。
ボランティアは結局一度行ったっきりそれから行けてない。
職場が変わっても忙しいのは相変わらずで今日も仕事が山積みだし、
腹立つ上司だって変わらずいる。
仲の良かった友人はタイミングを合わせたのかどうかは知らないが、
今日東京から実家の四国へ帰っていった。
なんだかんだ毎日文句を並べて口だけ達者な日々を送っているって
印象が強いけど、まぁいろいろ文句が言えて楽しい。
そんな普通の日常を送りながら、そういう普通が送れなくなってしまった人の
ことを思うと、言葉に詰まってしまうけど。
僕が東京にいるのは、そんな日常をまだ続けたい気持ちと、
もっと可笑しく楽しく変えられるだろって信じてるからだと思う。
吉田亀吉(編集)
今も3年前と同じく、編集者として雑誌や本を作り続けている。
少し働き方は変わったけれど、大きくは変わらない日々を送っている。
変わったのは、東京にいることを“選んでいる”自覚ができたこと。
東京以外に選択肢はいくつもあって、ラッキーことに東京を離れて暮らしだした
モデルケースになる友達は身近にいるし、拠点を移すっていうのは
現実味のない思いつきのアイデアってことでもなさそうだ。
でも今も変わらず今東京にいる。
あの日から風景や意識は色々な形で変わったけど、
きっとこれからも日常は続いて行くんだとも思う。
この国を、場所を選んでいる理由は何だろう。
人、仕事、コミュニティ、場所、カルチャー、刺激的なライフスタイル…。
どれもある部分で正解な気がするし、同時に、どれも説明不足な感じもする。
その理由をもう少し探してみてもいいかもしれないとは、思う。
そのためのヒントがMOUTAKUSANDA!!! MAGAZINEを通して見つけられたらいい。
東京にいる人、離れる人。東京、ローカルそれぞれの場所とコミュニティ。
そんな人や場所に触れながら、一緒に探って行きたいと思っているけど、どうだろう。
山若将也(編集)
MOUTAKUSANDA!!! MAGAZINEは、
来年の今を目標に、東京に、日本に、今いる意味を考える本を作ろうと思う。
1年をかけて取材や撮影をして、今この場所にいる意味を一緒に探していく計画だ。
自分がいる場所は、自分の意思で選びたいよね。
安全だと騙されながら、足かせをつけられたように暮らすなんて、モウタクサンダ!!!
危険もストレスも知った上で飲み込んで、今ここに暮らす意味ってなんだろう。
そんなことを、みんなと一緒に考えたいと思う。
3.11/TOKYO/MOUTAKUSANDA!!!