DJ嶋田のぶんぶんのポップス50音順第7回「き」~戦争なんてモウタクサンダ~
DJ嶋田のぶんぶんのポップス50音順第7回「き」~戦争なんてモウタクサンダ~

DJ嶋田のぶんぶんのポップス50音順第7回「き」~戦争なんてモウタクサンダ~

地方都市和歌山を拠点に活動する私的シティポップDJ・嶋田のぶんぶん。
彼が愛してやまない国産ポップスを50音順に紹介する連載エッセイ。
NYやイビザにいるDJの名前を自慢げに並べ立てる奴と
自国の音楽を哀愁と羞恥とリスペクトをもって語れる奴、
どっちが愛せるかっていったら、わかるよね?

集団的自衛権の行使容認?
武器をちらつかせた仲良しごっこは俺たちに必要なのか?
殴り合いなんてもうたくさんなんだよ。

今回は、そういうお話。

  • 文 / DJ嶋田のぶんぶん
  • 編集・題字 / 山若将也

ひょっとすると彼らは、「自分はタフな男だ」ということを
大統領にアピールできた、と思っているのかもしれない。

「俺達はもう、あんたが言った12才のボーイじゃない。
やばい武器だって持っているし、その武器を使うことだってできる。
そう、あんた達みたいなタフな大人の男だ。
デモ隊に官邸の周りを囲まれても、ビビらなかった。
本当さ。中東のならず者だって怖くないぜ。」

少し前パリで開かれた、世界最大の武器見本市で
彼らのうちの一人は、展示されていた「訓練用のゴム銃」を
得意げに構え、そして払いのけられた。
仕方ない。彼らが子どもの頃に扱い方を学んだ
凶器と言えばせいぜい、彫刻刀くらい。

玩具だとしても銃口を人に向けてはいけないということは、
たとえ防衛大臣だって、学校では習わなかったのだから。
それでも、そう遠くない未来、今度は玩具では無い
本物の銃口を人に向ける日がやってくるだろう。
もちろん実際に銃口を向け、そして向けられるのは
残念ながら“彼ら”では無く、“私たち”だ。


2014年初夏、日本は集団的自衛権の行使容認を閣議で決定。
果たしてオバマ大統領が、安倍総理を“タフな男”だと
思っているのかどうかは分らないが、
少なくとも「Sushiの人」からは一歩前進。
とにかく、アメリカはこの閣議容認を歓迎した。

なぜなら、今、アメリカはとにかく忙しい。

ようやくイラクから軍を撤退させられたかと思えば、
そのおかげで勢力を取り戻した武装ゲリラがイラクの一部を制圧。
こちらも内戦が続くシリアとの間に新しいイスラム国家の独立を宣言した。

その実態はいまだ掴めてはいないが、
親米国家では無いことは確か。ヨーロッパでは再び
ロシアの影響力が増し、東アジアでは中国が軍事力を
拡大している。軍のリクルーターが貧困層や不法移民を対象に
教育やグリーンカードをちらつかせ、軍への勧誘を続けているが
それでも深刻な人材不足は解消されない。

そんな中で、世界でも有数の軍備と規律を誇る、
日本の自衛隊はアメリカ政府にとって願ってもない兵力。


「知ってるぜ、俺のことを弱虫だって言ってただろう?
でも、もう違う。俺はタフになった。俺たちはタフな男同志だ。
これからは対等なトモダチさ。俺達が一緒につるんでりゃ、
みんなビビっちまうぜ。な、今日の放課後、家に遊びに来いよ?」

「ああ、分ってるよ。心配するな。俺たちはタフな
トモダチ同士だ。今度お前にちょっかいをかけるやつがいたら、
俺が相手になってやるよ。でも今日は駄目だ。
他にやることがある。良かったら、お前も連れてってやるよ」

タフな男たちの世界。タフな男たちは地下鉄やバスや
マラソンの会場に爆弾物をしかけ、そして爆発させる。

そのお返しに、今度は空から無人爆撃機で小学校や
結婚式場を爆撃する。そのお礼に、また爆弾が爆発する。
そこでは多くの人が死ぬ。
そして、それ以上に多くの人が、その死を目の当たりにする。

そこでは多くの人の怒りや憎しみや悲しみが、
もしくは、そのどれにもはっきりとは分類できない感情が渦巻いている。
その感情は、“私たち”には想像できない。
それは不幸なこと?それとも幸せなこと?


DJ嶋田のぶんぶんのポップス50音順、第7回「き」。

本来ならば、布施あきらの「君は薔薇より美しい」を
お送りする予定でしたが、日本政府による集団的自衛権の
閣議決定に伴い、急きょ番組を変更してお届けしています。

毎回、「あ」から始まり「ん」で終わるまで、
いなせな国産ポップチューンをお届けするこの連載、
今晩お届けする一曲は、おそらく、Youtubeを引用するまでもなく、
誰もがそのメロディーを思い浮かべることができる、
そして歌詞の全てをここで引用してもJASRACから
MOURAKUSANDA!!!編集部が訴えられることは
ないと断言できる、日本で唯一の楽曲。

「君が代」
作詞: 読み人知らず

君が世は
千代に八千代に
さざれ石の
巌をとなりて
苔のむすまで

「巌(いわほ)と成りて」の“いわ”は岩=男性器、“ほと”は陰=女性器。
それが成る、つまりはセックスする。

解釈によって、君が代は天皇崇拝の歌にもなれば、
平和を願う歌にもなれば、セックスの歌にもなる。

逆に言えば、「君が代」が国家であり続ける限り、
この歌を、どう解釈するのかは、この国がどんな国で
あってほしいのか、と言えるのかもしれません。

DJ嶋田のぶんぶんのポップス50音順。
本日は番組の内容を変更し、また、予定の時間を延長してお届けしました。
それではまた次回、「き」に続く50音「く」でお会いできることを。

千代に八千代に、何度、時代が移り変わっても、
ずっとずっと、君とセックスしよう。
小さなさざれ石が大きな巌にって、
やがて、そこに苔が生えるまで、君とセックスしていよう。


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